253人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「――――34点」
「はい?」
あたしの『報告』を聞いていた都子さんが、ぼそっと言った。
今日は、話の内容も内容なので、隣の駅前まで出てチェーン店の居酒屋のカウンターで話している。
ビールを飲んで都子さんは溜息をつく。
「全っ然面白くない。そんな大福に生クリームかけてメープルシロップかけて砂糖ぶちまけたみたいなコイバナなんか、芸人のドッキリみたいにケーキになって爆発すればいいのに」
「……いや、だって報告しろって言ったのは都子さんじゃないですか……」
「そうだけど。で、もちろん、ハイ!って即答して、そんで勢いでホテルでも行った?」
「行きませんよ!そんなの。そのあとお返しもらってファミレスでご飯食べて帰っただけです。蓮次さんだって引っ越しの準備で忙しいし」
「つまんない奴らだな。そんなだから5年もかかったんでしょ。お互い」
チッ、と都子さんは舌打ちする。
「いや、でも」
言いかけてやめると
「なに」
と、すかさず都子さんが突っ込む。
「でも、なによ?」
「……いや、いいです。何も無いです」
「あったんだな」
「いや……」
「目逸らすな。コラ」
――――だって、言いたくない。
自分の意思と関係なく、勝手に涙が溢れて号泣してしまった話なんか、当事者以外に知られたくない……。
最初のコメントを投稿しよう!