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「え!?――――ちょっ……ちょっと待ってろ。亜美ちゃん」
はい、と答えを返すどころか、いきなり涙を流し始めたあたしを見て、当たり前だろうけど蓮次さんはものすごく動揺した。
さっきの力強い告白が嘘だったみたいにうろたえて、コートのポケットからハンカチを引っ張り出して、あたしの頬にそっと押し当てる。
「……ゴメンな。亜美ちゃん。……それ、どっちにしても、俺のせいだよな。今さらこんなこと言うから……」
あたしは力いっぱい首を振った。
「そうじゃないです。……あたしが……全然、自分の気持ちほったらかしだったから……いつでも会えるからと思って、今度のバレンタインまで何もしなかったから……」
そうだ。
あのチョコレートだって、作ってる間は楽しかったけど、それは……うまくいったら、ってことじゃなくて、これで区切りつけようという最後の記念みたいなつもりだったからで。
どうせ無理だと思って、自分の気持ち無視して……。
「……っ」
最初は無意識だったのに、自分の気持ちに気付いたら、しゃくりあげるくらい泣き出したあたしの涙を、彼は黙ってハンカチで拭う。
こんな、夜景が見えるとこまで来て告白してもらって、何みっともないことしてるんだろと思う。
「……ごめんなさい」
「いいから。……返事は後でいいから」
あたしは、グズグズの顔で、首を振って言った。
「……れんじさんがすきです……ずーっと、……ふられたあともすきでした」
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