近くて遠い片想い

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「好きというか、登校班が一緒で、班長さんで優しかったんです。あ、優しいのはそのあともですよ?ちょっと一時期金髪になったりピアスしたり、どう見ても普通じゃない制服着てたりありましたけど、それでもあたしが中学生の時、塾帰りに夜ひとりでコンビニ行った時に会ったら『最近変質者出るらしいから危ねーぞ』ってわざわざ原付引いて歩いて一緒に帰ってくれたり」 「それ、むしろ一緒の方が別の人に絡まれそうで危ないって感じじゃない?」 「そんな気もしなくもなかったですけど。でも根は優しい人なんですよ。今は真面目にお仕事されてますよ?」 「だから、見た目は、って言ったじゃん。それは分かるけど」  はいお待たせ、とおじいちゃんのマスターが運んできてくれたハンバーグ定食は40年以上内容も味も変わっていないという噂だ。どうしてご飯があるのに更に炭水化物のナポリタンが付いてるのかは謎だけど。  それを見て急に、ここが超地元で名前を出せばみんな分かってしまうというのを思い出した。 「けど、他にもっといい男居そうなもんじゃない?」 「あの、すいません。ちょっと声抑えてください」  昼のピークは過ぎても、他にも昼休みらしいお客さんは居て、田舎のことで誰がどこで聞いてるか分からない。
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