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「おい、教えてくれ」
「なに? どこが分からないの?」
父が覚束ない指で、タブレットの操作画面の歯車マークをタップした。
「ほれ、ここからがわからんのじゃ。この間敬老会でな、画面の中の嫁さんを若返らせることが出来ると聞いたんじゃけどな、どうすればいいんじゃ。教えてくれ」
「え……?」
お父さん何言ってるの?
いつも縁側で寄り添うように二人で日向ぼっこをして、あんなに仲睦まじくお茶をしていたのに。その姿がとても微笑ましかったのに。──父はその母じゃなくて若い頃の母に会いたがっている。
娘は心底がっかりした。
「もうお父さんたら。年を取ったお母さんじゃダメなの?」
「そ、そんなことはないけんど……昔からほれ、畳と嫁は新しい方がエエというじゃろ。ささ早う操作してくれ。二十五歳、いや二十三歳じゃ。二十三歳のあいつにしてくれ。早う、ああ…おぼこかったなあ、あの頃のあいつは」
「もう、お父さんのバカ」
✴
レビュー 父がハマり過ぎたので…。
(★★☆☆☆)
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