ソロ冒険者アルト

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ソロ冒険者アルト

「今日の依頼はこれで終わりか」  森の中で薬草が大量に入った籠を背負いながら俺、アルト・カイジャンは呟いた。 「さて、ギルドに戻るか」  森から歩いて数分の小さな町メルトスに俺が所属しているギルドがある。 「アルトさん、お帰りなさい。依頼の方は······大丈夫みたいですね」  ギルドに戻って来た俺を受付嬢のミーサが出迎える。 「あぁ、結構上質な物があったぞ」  俺は籠をおろした。 「確かに、て言うかアルトさんなら問題はありませんよ。何せ我がギルドのエースなんですから」 「止めてくれよ、都落ちしたただの冒険者だ」 「本当にアルトさんを追放したギルドやパーティーは見る目がありませんよ。王都の方々の神経を疑います」 「そう言ってくれるだけでありがたいよ」  俺はミーサの言葉を軽く受け流していた。 「最初、来た時はアルトさんはボロボロの状態でしたからね」 「まぁ·······、そうだったなぁ」  ミーサの言葉に俺は当時を思い出していた。  俺がこの町にやって来たのは1年前になる。  この町に来るまでは俺はメルトスもあるクラニア王国の王都にある大手ギルドに所属していた。  当時はパーティーを組んで魔物を狩ったり、迷宮に入ったりと活動していて気付けばAランクになっていた。  だが高ランクになるとデメリットが多くなってくる。  例えば、嫉妬で別の冒険者から邪魔された事がある。  ギルドでの扱いも酷かった。高難度の依頼が入りやすくなるようになり依頼の成功率をキープするのが大変だった。  そして信頼していた仲間との関係も考え方の違いとかでギクシャクしてきた。  そんなマイナス要因が重なった結果、遂に俺は仲間と大喧嘩をしてしまい暴力事件を起こしてしまった。  起こしてしまった、と言うか今冷静に考えたら嵌められたのかもしれない。  弁解する余地も無く俺は大手ギルドを首になってしまった。  しかも、今までの冒険者としての実績は無かった物となり、Aランクも剥奪された。  何もかも無かった事にされた俺は全てが嫌になり王都を後にした。  そして、メルトスにやって来た俺はこのギルドで一からやり直す事にした。  その時に『パーティーを組まない』、『Aランクにはならない』と言う自分の中でルールを決めた。  もうあんな辛い思いをするのは真っ平ごめんだ。  俺はこの町でゆったりまったりな冒険者ライフをする事にしたのだ。  そうして1年間過ごしてきたしこれからも変わらない。  そんなつもりだった。  緊急クエストで急遽迷宮に入る事になりある少女と出会わなければ······。   
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