緊急依頼

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緊急依頼

「うーん、よく寝たぁ······」  ふわぁ、と欠伸をしてベッドから起き上がる。  此処はメルトスに唯一ある宿屋で俺の常宿だ、半分家に近い。  営んでいる主人もかつては冒険者をしていたらしくて良くしてくれている。  着替えて朝飯を食べて宿を出てギルドへと向かう。 「さて、今日は何の依頼を受けようか?」  まぁ、田舎にあるギルドの依頼と言えば昨日の薬草採りか魔獣駆除が定番だ。  のんびり歩きながらギルドへ向かうとミーサが玄関前で立っていた。 「あっ! アルトさん、待っていましたっ! 緊急依頼ですっ!」 「緊急依頼? 内容は?」 「えっと、『この近くにある迷宮に入った冒険者の捜索』です!」  ······は? 迷宮? 「ちょっと待て、この辺に迷宮なんてあったか?」 「最近、確認されたみたいでAランクだそうです」 「そんな物騒なもんが現れたのかっ!?」  迷宮は何時何処に現れるかわからない物で中は魔物や罠なんかが仕込んである。  そこのボスを倒せば攻略となり、迷宮攻略は冒険者にとっては勲章みたいな物だ。  迷宮には冒険者同様ランクがありAランクは高難度な迷宮だ。  俺も勿論攻略はした事があるが命の危機を味わった事がある。  そして、迷宮は単独で入ってはいけない、自殺行為に等しいからだ。 「じゃあすぐにでもパーティーを組んで······」 「それがみんな怖じ気づいてまして······、何せ今まで迷宮なんて現れた事がありませんでしたから」  経験が無い、となると及び腰になるのは仕方がないか······。 「王都のギルドから応援を『それは止めてくれ』デスヨネー」  王都のギルドの奴らの顔なんて見たくもないし関わりたくない。 「わかった、俺が行くしか無いだろう······、別に攻略しに行く訳じゃないしな」 「すいません、よろしくお願いします」  こうして、俺は1年ぶりに迷宮に入る事になった。
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