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触りたいんですよ
これまで、数多くの戦いを繰り広げてきた……しかし、私は必ず敗北している……。彼は、守りが固すぎる! チャンスはいくらでもあった……なのに、どうして!
「どうして、剣助の肌に触れないの!? 私だって、すべすべの肌を触りたいのに!」
「えぇ……。聞きたかった理由は、それだったのか……」
「当たり前じゃん! 彼氏の素肌を知らない女って、おかしいでしょ!」
「その言い方も、おかしい気がするけどね!?」
ああ……あの、すんべすんべな男の肌! 毛が生えていなければ、もう女の子の体だよ……。でも、少しだけ男らしさが残る毛! 下手に剃ってないのが素晴らしい! 嗚呼……完璧です。「ああ」が「嗚呼」になるぐらい感動したわー。何を言っているか分からない? じゃあ、分からなくなるくらいに凄いってこと!
「うん、すんごいオーラが出ちゃってるけど……話し始めて良いのかな?」
「あい!」
「は、はい……原因は分からないんだけど、人に地肌を触られると躁うつになるリスクが上がるんだ。だから、なるべくだけど……人に触りたくないんだよ」
「な、なんだって!?」
そんな……原因が分かれば、対処法を考えることができるのに! いや、待てよ? 地肌に触らなければ良いんだよね? それなら……!
「……ほい!」
「ん? どうし……え、何してるの!?」
私は、剣助の胸を両手で触った。
「ふ……これなら大丈夫でしょ」
胸に触った……と言っても、服越しに触っただけだ。さっき、地肌に触られるとリスクが上がる……みたいなことを言っていたから、一か八かで触ってみたのだ!
「た、確かに……服越しなら大丈夫。だけど……どうして胸?」
「これで! 剣助も、私の胸に触る理由ができたでしょ! そういうことよ!」
そう……私の真の狙いはこれ! 触りたいし、触って欲しいんですよ!
「どういうことよ……」
「やだなぁ……女の子にそれを言わせる気?」
「うん……やっぱり、千夏さんはすごい……のか?」
ふふ……いつか、あんなことやそんなことを……剣助に!
「……ふ」
「まーた、何か企んでるよ。うん……可愛いから良いけどさ」
なんか、褒め言葉をもらった気がする……。
ちなみに、剣助が私の胸を触ることはなかった。
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