親友であるために

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 ……学校の授業は、眠い。  あれ、呪文だよな? 六時間目の日本史とか、もうそれだろ。何を言っているのか、さっぱり分からん。  実際、この授業は半分以上の人が寝るしなぁ……。なのに、先生は楽しそうに睡眠導入剤をばらまいている。どうして、あんな自慢話のように語ることができるのか。  はぁ……うぜぇ……。 「……だからね! この一ノ谷の戦いは面白いんですよ! こんな断崖絶壁を馬で下るなんて無理だ。さすがに、ここからは攻めてこないだろう……平家の人たちはそんなふうに考えていた! だけど、義経! この断崖絶壁を馬で駆け降りちゃうんです! いんやぁ〜〜!!! かっこいい!! かっこいいよ! 義経さん!!! オレァ、もう、ベッタベタに惚れちゃったね!!!」  いや、馬で駆け降りるところに惚れちゃうのかよ。まだ、平家を倒してすらいないぞ? しかも、断崖絶壁を馬で駆け降りるって……どれだけの人が無事だったんだよ。もしかしたら、それによって多くの仲間が犠牲になったかもしれないのに……。平家と戦う前に亡くなった人は報われないよなぁ。惚れるとこおかしいだろ。  倒したところを説明して、惚れたとか言ってくれよ。どこがかっこいいのか分かんなくなるぜ、全く……。 「はい! ということで! この有名な奇襲の名前を誰かに答えてもらおうと思います!」  嫌だ……答えたくない……てか、答えが分からない……。  そんなことを考えて、ぼーっとしていると、先生と目が合ってしまった。あ……これは、当てられるやつだ。
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