悪魔の子

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悪魔の子

「……はへ?」  え? なんて言われた? 「す、好きなんだよ! 佐伯さんのことが!」  好きって……ん? 俺のことを好きになる人間が、存在するの?  常に人の悪いところを見つけるような、根性がひん曲がったクソ女を好きになるなんて……。見る目がない……なさすぎるよ、関口。俺のどこが良いって言うんだよ。人に褒められた経験が少ない俺は、自分の良いところがわからないんだけど。 「佐伯さんは……いつだって、かっこいいんだ! 俺が知らないような知識を平気で持ってるし、自分にとっての正義だってある!」   かなり興奮しているのか、関口の顔は真っ赤だ。  隠れる間際の太陽にだって負けない、朱色に染まった顔。それは、駄々をこねる子供のようでもあり、尻尾を一生懸命に振る子犬のようでもあった。 「初めて佐伯さんを見たとき、思ったんだ。この人は、俺にないものを持っているんだ……ってさ」  いつ、見たんだろうか。 中学生の頃……いや、高校生になってから? どちらにせよ、それってつまり、一目惚れ……か? 「これが一目惚れだったのか、今となってはもう、分からない。でも、一つだけ、確かなことがある。それは……その時からずっと、佐伯さんに憧れていたってことだ」  何かを言ってやりたい……得体の知れない気持ちが込み上がってくる。でも、その気持ちがなんなのか、言ってやりたい言葉がなんなのか……分からない。  多分……ここで何かを言わなきゃ、全てが……終わってしまう……。 「いつの間にか、その憧れは恋心に変わってしまった。だから……言わなきゃいけないと思ったんだ……」  視界が、揺らいでいく……。 「……えき……さん?」  頼む……夢で、あってくれ…………。
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