37人が本棚に入れています
本棚に追加
異常な彼
「ごめん……ごめん……」
「ど、どうしたの……剣助?」
最初は、私が強引にキスしようとしたから、泣いたんだと思った。
だけど……明らかに様子がおかしい……。
剣助はどんな状況に陥っても、私の前で涙を流したことがなかった。その理由は、女の子の前で泣くのは男としての恥……らしい。
正直に言うと、この言い分はよく分からないけど……とにかく! 剣助は、そういう男だ。
「そんなに泣くことないじゃん……いつもの剣助はどこに行ったの?」
「ご、ごめん……あ、あの……う……」
どうやら、こんなに泣いている理由を教えようとしてるみたいだ。でも、顔がぐちゃぐちゃになるぐらい……酷く泣いているため、うまく答えることができないみたい……。
「えっと……とりあえず、一旦落ち着こう?」
「う……うん……はぁ、ハァ……ぐ……!!」
「剣助!? 大丈夫!?」
どうしよう……過呼吸になってるみたい……こういう時って、救急車? で、でも……なんて言って呼べば……わ、私が焦ってどうするんだ! 一番辛いのは剣助なのに……。
「ち……チナツ……さん……」
「どうしよう……どうしよう!」
「千夏さん! お願いだから聞いてくれ!」
「はい!」
辛そうにしてるけど、なんとか正気に戻ったみたい……。
あぁ…こんな時でさえ……私は彼の足手まといなのか……いや! そんなことを考えてる暇はない!
とにかく、剣助の言うことをしっかり聞かないと!
「あ……あの棚に……薬が、入ってる……から…………取ってきてくれないか……緑色の文字で、頓服薬って……書いてあるから……おね……ガイ」
「分かった! すぐに取ってくる!」
早く……早く取りに行かなきゃ!
最初のコメントを投稿しよう!