異常な彼

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異常な彼

「ごめん……ごめん……」 「ど、どうしたの……剣助?」  最初は、私が強引にキスしようとしたから、泣いたんだと思った。  だけど……明らかに様子がおかしい……。  剣助はどんな状況に陥っても、私の前で涙を流したことがなかった。その理由は、女の子の前で泣くのは男としての恥……らしい。  正直に言うと、この言い分はよく分からないけど……とにかく! 剣助は、そういう男だ。 「そんなに泣くことないじゃん……いつもの剣助はどこに行ったの?」 「ご、ごめん……あ、あの……う……」  どうやら、こんなに泣いている理由を教えようとしてるみたいだ。でも、顔がぐちゃぐちゃになるぐらい……酷く泣いているため、うまく答えることができないみたい……。 「えっと……とりあえず、一旦落ち着こう?」 「う……うん……はぁ、ハァ……ぐ……!!」 「剣助!? 大丈夫!?」  どうしよう……過呼吸になってるみたい……こういう時って、救急車? で、でも……なんて言って呼べば……わ、私が焦ってどうするんだ! 一番辛いのは剣助なのに……。 「ち……チナツ……さん……」 「どうしよう……どうしよう!」 「千夏さん! お願いだから聞いてくれ!」 「はい!」  辛そうにしてるけど、なんとか正気に戻ったみたい……。  あぁ…こんな時でさえ……私は彼の足手まといなのか……いや! そんなことを考えてる暇はない!  とにかく、剣助の言うことをしっかり聞かないと! 「あ……あの棚に……薬が、入ってる……から…………取ってきてくれないか……緑色の文字で、頓服薬って……書いてあるから……おね……ガイ」 「分かった! すぐに取ってくる!」  早く……早く取りに行かなきゃ!
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