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「なぁ……そろそろ、顔をあげてもいいと思うんだけど……」
「う〜む……そう、だね……うん、うん……」
真っ赤に染まった顔が、上がったり下がったり……ひょこひょこっとしている。俺よりも身長が高い千夏だけど、なんだか……小動物みたいで可愛い。
千夏のことを見ているだけで、乾いた心が少し潤ってくる。そもそも、乾いた理由が分からないけどな。潤うのは良いことだ、うん。この時間を楽しむ権利が俺にはあるはずだ、うん。
「あの……そんなに見られると、余計に恥ずかしいんだけど……」
「それじゃあ、顔を上げろよ」
「どういうことよ……うう……」
ふぅ……かなり潤った。もうね、カッピカピに乾いた大地が田んぼになるぐらいには潤った。
十分に栄養をもらったし、本題に移ろう。
「えっと……千夏は、あの歌が好きなんだな」
「ん!? もしかして、あのゲームを知ってるの!? あやねん!」
突然、興奮した様子で顔をあげた。その拍子に、千夏と目が合う。心の準備ができていなかった俺は、あからさまに目を泳がせてしまった。
「え? えっとぉ……」
「ねぇ! どうなの、あやねん!」
どうしよう……心臓が激しく動いちゃってるんだけど。うう……顔が赤くなってるかも……。
「あれ? あやねん、顔が真っ赤っ赤だけど……大丈夫?」
千夏が心配そうに顔を近づける……ぐほぁ! おお! もう、その事実を受け入れるだけで、倒れそうだ……! ていうか……これじゃあ、立場が逆転してんじゃん!
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