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「最近また魘され続けてるって?」
リビングのソファーの上、蓮は検査前だからごめんねと白湯を渡された。蓮が落ち着いた所で隣に座った先生は血液検査の注射器や血圧計、あとは蓮は名前をしらない色々な器具を持ってきた鞄から取り出し並べつつ、今日の天気はどう?みたいなノリで聞いてくる。
「客にはバレてないよね?」
「大丈夫らしいよ。流石プロは違うね」
「添い寝は熟睡しないから」
この際だからと血圧を測られながら確認させてもらうと、
「一緒に寝てる男が死んだら怖いから?」
と先生は結構エグい所をついてくる。先生はこういうところがえげつないけど素敵でもある。
「んー相手より……目が覚めた時の、見知らぬベッドと天井が怖いから……かな」
「蓮にしか言えない実体験こもった言葉だねぇ。でも、ここの客は厳選されてるしボディチェックも厳しいから簡単には誘拐されないよ」
思わず漏れた蓮の本音に先生は苦笑いを見せてくれた。
先生のこういうところが本当にいい。話を重くせず、でも、耳を塞ぐ訳じゃない。
「とりあえず靴はここ一年半履いてないのが自慢かなぁ」
「赤いハイヒールでも送ろうか?7センチ位ヒールがあるの」
「そんな高いハイヒールなんて歩けないよ。小鹿になっちゃうよ、僕」
「ベッドの上、専用に決まってるでしょ?」
「そーゆー?」
「そーゆー」
「変態」
「失礼な」
こんなジョークにならないジョークにも笑って返してくれる。
本当に先生は昼の救いの女神だ。いや神様か。でも、あんまり長引かせると影山先生はこういうのを気に入ってしまう。本当に赤いハイヒールを買ってきてベッドの上で蓮に履かせて、ヤりかねないから深入りしてはいけない。
「ここのところの夜にでてた熱は多分寝不足や過労、精神的なものからだろうけど、蓮は元々の体質もあるから様子見かな。血液検査の結果がでたら、もう一度くるよ。とりあえず寝て。一週間くらい休んで。どうしても寝れないなら私が準備運動込みで寝かしつける。ああ……そう言えば、またバーチャルごっこをしてたって聞いたよ。季節感も大切だが、夏は絶対止めてね。室内でも熱中症になるんだから」
ソファーに座りながらさり気なく蓮の体調を診てくれた先生はそう言って紙に何かをメモしていく。多分薬や食事、生活の指示だろう。蓮には渡されない。でも目が覚めると一日分の薬だけ、みたいなのはよく見かけるから誰かが管理している筈だ。
「やっぱり熱が出てたんだ。雪の降った日くらいからそんな気してた。ちょっとテンションおかしかったし。休みは……予約してる人次第かな」
元々蓮の体力を考え、毎日は客をとってない。とはいえ、ここのところ客がくる日は確かに多かったし、体調不良は仕方がないだろう。最近の悪夢も落ち込みもこの不調のせいだと思えば納得だ。
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