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one hundred and four (side 小梅)
これがキスというものなんだ。
鹿島さんが、私のことを好きだと言ってくれた。
けれど、嬉しさも何の感情もない。こんな汚れた私に、喜ぶ権利も嬉しいと思うことになんの価値もないから。
指輪も、返してしまった。
ふふ、鹿島さん。またかって、呆れて思っただろうな。
でも、これでいい。あなたに、大切な優しさをたくさん貰った。
好きな人と交わすキスは、きっとどんな高級なプレゼントより、尊いし美しいんだろうな。だから、最後にくれたプレゼントは、私が本当に心から欲していたものになるのかもしれない。
鹿島さんが好き。大好きで、大切。
ひとりぼっちになった私の、この世界で唯一無二の人。
借りた携帯にも、あなたの名前だけを残しておいた。
缶ジュースを、たくさん買ってくれる鹿島さん。優しく抱き締めてくれた鹿島さん。優しいキスをくれた鹿島さん。
こんな貧乏でみっともない私をぎゅっと抱きしめ、好きだと言ってくれた。
けれど、この世界に唯一のあなたに、私は到底、届かないし相応しくない。
「ごめんなさい、本当に」
あなたのほっぺの体温を、あなたの甘い口づけを、忘れないように生きていく。
「ううん、こちらこそ、今までありがとう。楽しかった」
神さま、ありがとう。
鹿島さんに会わせてくれて。
鹿島さん、ありがとう。
あなたが、私の唯一無二。
「鹿島さん、ありがとうございます」
あなたを、心から愛しています。
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