seventy five (side 小梅)

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seventy five (side 小梅)

人生、こんなことがあって良いのだろうか? 大逆転人生とは、本当にあるんだなあ。 そんなことを私が考えていると、私の周りをうろうろとしながら手を動かしている多摩さんが声を上げた。 「あーあ、小梅ちゃんに先越されたなあ」 経理や事務作業は、多摩さんの仕事だ。 「ええ、何がですか?」 「彼氏なんて作っちゃってえ。しかも、あの鹿島さんときた」 「そ、そんなんじゃないですよ」 「誰か、うちの娘、貰ってくれるハイスペックはおらんかのう」 おどけて言う多摩さんが可笑しくて、私はぷっと吹いてしまった。 「ねえ、小梅ちゃん。須賀さんはもう要らないんでしょ? うちの娘に貰っちゃってもいいかしら?」 多摩さんの視線がキラリと光る。 「い、要らないって、言い方っ‼︎ 須賀さんとは私、関係ありませんから」 「ふふん、私知ってるんだよ〜。秋田くんから聞き出したんだからね」 「な、な、何がですか?」 多摩さんはいつも私を何らかの話題で揺さぶってくるのだけど、今回もそう決めたらしい。どうやらロックオンされているようだ。 「須賀さんに告られたんだって?」 私は内心動揺しながらも、つんと横を向いて、レシートを丸めていった。 「小梅ちゃん、意外とモテるわねえ」 多摩さんのニヤニヤ顔が近くをうろうろとする。 「意外とって失礼な。そんなんじゃありませんよ。須賀さんは、彼女さんとあまりうまくいってないって……別れるかもしれないって私にこぼしただけですよ」 「うわあ、それはもう告ってんのと同じでしょ」 「違います」 私は、ピシャッと言い切ると、丸めたレシートをレジの棚に放り込んだ。
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