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戦闘の激しさを物語る竜種の咆哮と、危機感を感じさせる音楽に体が高揚しているのがわかる。
演技とわかっていてもこれだけ心が揺さぶられるのだ。
まだ訓練だとしても本番でも成功するのは間違いないと思わせてくれる。
これまでの努力や苦労が身を結ぶと思えば泣きたい気分にもなってくる。
ヘラクレスが聖戦士のもとまでたどり着くも、ボロ布の戦士の戦いを前にすぐには踏み込むことができない。
色相竜がまた一体倒れたところで聖戦士が一体を受け持とうと前に出た。
アローゼドラゴンを相手に聖戦士が大剣を振るい、ヘラクレスも戦士の邪魔にならないようタイミングを見計らう。
ボロ布の戦士がアローゼドラゴンの攻撃を躱し、竜種の模型へと斬り掛かったところでヘラクレスも前に出る。
そのままボロ布の戦士は一時退場。
今度はもう一人のゼイラム演者が右の舞台で炎剣乱舞。
左の舞台からは色相竜として映し出されていた模型が隠れ、通常の竜種だけが背後に残る。
アローゼドラゴン、色相竜と戦う聖戦士は上位竜の邪魔が入ったことで致命傷を受け、それでも死力を尽くして色相竜を討伐する。
ヘラクレスは一体目の色相竜討伐に成功するも、聖戦士に手を差し伸べたところですでに遅く、回復スキルも意味をなさない。
いくつかの台詞を挟んで新たな色相竜に臨む。
実に熱い戦いの演技である。
あれほど嫌だったエイシス劇団が、今ではディーノにとって冒険者業にも劣らないくらいに誇れる劇団だ。
もう涙が止まらない。
本番でもないのに、訓練なのに涙が出ては団員に示しがつかないのではないだろうか。
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