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「本当?
ありがとう、嬉しい!」
妻は画面に戻ってきた。
彼女の笑顔に合わせ、お腹を見つめながら微笑んでいると、
「おい、いつまで喋ってるんだ」
画面の向こうの奥から聞き慣れない男の声。
「だ、誰今の?」
僕の笑顔が消えたのを見て、
「なに?何か変なこと疑ってるの?」
妻は真顔で問い掛けを返してくる。
「い、いや、そういうわけじゃないけど……
でも確かに男の人の声が……」
引かない僕に、
「あれね……」
妻は寂しそうな表情を浮かべ、
「大好きな夫に会えない日が続いてるでしょ。
私寂しくて……
だからバーチャルのお父さんを飼ってるの」
少しの間部屋の奥に目を向け、また僕へと視線を戻す。
「そ、そっか。
会えないと寂しいもんね。
今度妊娠のお祝いも兼ねてどこかで……」
初めて会う事を提案しようとしたところで、彼女が話を変えた。
「でね、私これから妊娠に集中するから……」
少し間を溜め、
「しばらく会えなくなる」
なんとも言えない表情を作った。
「そっか……
僕達いつ会えるのかな」
寂しい質問を投げ掛ける。
「小学校の入学式には絶対来てね!」
妻は最高の笑顔を見せ、
「もう時間も遅いからオンライン切るね」
電源に手を伸ばすのが見える。
「あっ、あの……」
僕が何かを言いそうになると彼女は手を止め、
「それから、次からはパパになってるんだから、これからもお仕事頑張って今まで以上にお給料家に入れてね」
投げキッスをして、止めていた手を再び動かして電源を切った。
「うん、頑張るよ」
暗くなった画面に向かって気合いを入れた。
寝転んで天井を見上げて思いを呟く。
「赤ちゃん、僕に似てるといいなぁ」
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