おはなし 17

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おはなし 17

 玄の民は国の復興へと舵を切り、街は活気を取り戻していきました。  しかし、双子は最奥の間に閉じこもり、  ぼんやりと日々を過ごしていました。  ツキシロの夢見草は、一度に大量の浄化をしたため  樹勢が弱っておりました。  ハイシロの水晶の時計は、落とした時の衝撃か  正確な時を計れなくなっていました。  双子の力がなくなったわけではありません。  器物に頼ることなく自在に力を操ることは  今の双子には何でもないことではありました。  ただ、長らく使役してきた器物の存在は  自らの力の正当性を象徴する大切なものでありました。  時計を直してもらおう。  ある日、ツキシロがつぶやきました。  誰に直してもらうのか? そもそも、誰がこの細工をしたのか?  ハイシロは驚いて聞きました。  クロベニに聞いたことがある。大陸には腕の立つ細工師がいるらしい。  きっと、この時計も直してもらえる。  それは、ツキシロが玄の国を出ることを意味していました。  この時計は私のものだもの、私も一緒に行きたい。  ハイシロは言いましたが、ツキシロは首を横に振りました。  ここには、両親がいるから、ハイシロには残ってほしい。  それに、  今は、独りになりたい。
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