5人が本棚に入れています
本棚に追加
おはなし 17
玄の民は国の復興へと舵を切り、街は活気を取り戻していきました。
しかし、双子は最奥の間に閉じこもり、
ぼんやりと日々を過ごしていました。
ツキシロの夢見草は、一度に大量の浄化をしたため
樹勢が弱っておりました。
ハイシロの水晶の時計は、落とした時の衝撃か
正確な時を計れなくなっていました。
双子の力がなくなったわけではありません。
器物に頼ることなく自在に力を操ることは
今の双子には何でもないことではありました。
ただ、長らく使役してきた器物の存在は
自らの力の正当性を象徴する大切なものでありました。
時計を直してもらおう。
ある日、ツキシロがつぶやきました。
誰に直してもらうのか? そもそも、誰がこの細工をしたのか?
ハイシロは驚いて聞きました。
クロベニに聞いたことがある。大陸には腕の立つ細工師がいるらしい。
きっと、この時計も直してもらえる。
それは、ツキシロが玄の国を出ることを意味していました。
この時計は私のものだもの、私も一緒に行きたい。
ハイシロは言いましたが、ツキシロは首を横に振りました。
ここには、両親がいるから、ハイシロには残ってほしい。
それに、
今は、独りになりたい。
最初のコメントを投稿しよう!