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翌朝起きると、体調は少しはマシになっていた。
好き勝手に抱かれて体が怠いはずなのにも関わらず自分より早く起きてた新谷が、作ってくれたおかゆも、全く味はしなかったが、身体は温まった。
「篠崎さんのスケジュールは、どんな感じですか?」
言いながらネクタイを締めている。
「朝イチで寄りながら行きますか?」
―――そうだ。自分の熱と、新谷への熱で、すっかり忘れていた。
夏希の家の室外機はどうなっただろうか。
篠崎は途端に憂鬱になり、パソコンデスクに置いてある卓上カレンダーを見下ろした。
メーカーに連絡がついたところで、すぐに駆けつけてくれるかはわからない。
昨日は急に気温が低くなり、床暖房に限らず、たくさんの家庭が暖房機器を今年初めて使っただろう。不調はそういうときに起こりやすい。
今日中に来てくれればいいが、下手したら土日を挟んで月曜日ということも十分にあり得る。もしかしたらもっと先になることも。
新谷が直せればいいのだが―――。
「頼りにしてるぜ。ダイクウのエキスパート!」
肩を叩くと新谷は柔らかい表情で微笑んだ。
「元、ですよ。元」
その笑顔を見て、まだ本調子じゃないためか、目頭が熱くなる。
この男を失いたくない。
なぜか嫌な予感がよぎり、それを誤魔化すためにもう一度その肩を今度は少し強めに叩いた。
「痛いすよ」
新谷が笑う。
潤んだ瞳のせいか、彼の笑顔は二重に見えた。
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