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11
もしも、人生が映画みたいに巻き戻せたらな。
引きつった感じの笑いがこみあげてきたな。
何が嬉しいって実は昔好きな女がいたんだよ。
だから、もしも戻れたら幸せな未来に向かって彼女の手を放さないって誓ってさ。
だけど、現実は戻れないことを考えたくなかったから、
帰り道にスーパーで安い酒を買いこんで、
俺はそれを飲みながら夜道をゆっくり歩いた。
酒を飲みながらインターネットしてさ。
なんで俺はこんなに幸せじゃないんだ。
どうして俺みたいな人間ができたんだよって泣きながら寝たね。
日本中に俺みたいな孤独な人間がそこら中にいるんだろうね。
毎日化粧する孤独な老婆や誰も聞いてない中、独り言を言う孤独な教師が。
神様って最高だね。
12
眠りにつけたのは朝四時くらいだったなんだが、
こういう日に限って、幸せな夢を見ちまうんだよな。
大学生の時付き合ってた夢だった。なんでもない好きな娘とアルバイトをしてさ。
親の車で、デートで海に行った時の夢。
ああ、泣いたね。寝ながら泣いてたね。
無慈悲に幸福な夢から俺を救出したのは、母親の声だった。
無視し続けてると、俺の名を呼ぶ声がした。
家事も洗濯もやらないくせにいい女ぶるのが本当に気持ち悪かった。
なんか条件反射的に嫌な気分になったけど、
母親を見て、俺は思い出した。
時間が巻き戻ったんだ。
いってきます
そう言うと、俺は親に軽く挨拶をして大学に行った。
アルバイトだ。そういえば、今日は講義の後、アルバイトがあったっけ。
なぜ、人生が戻っているのか知らないが今日は好きな娘とアルバイトの日だ。
そう思いながら、クラクラする頭で盛大にゲロをぶちまけた。
13
げっそりした気分でアルバイトに向かうと彼女はいた。
ハグでもしようかと思った。
俺はアルバイトが終わると横になって学校をサボった。
「先輩、手握ってください」と横で小野さんが言う、
「冷蔵庫での作業は寒いのであなたの手で温まります」
俺が、手を握り返そうとすると彼女は離れていった。どうやら、俺から触るのはダメらしい。
小野さんは「じゃあ、帰りましょう。こっちから帰りましょう」と言うと、 一緒に帰り始めた。
俺は幸せだなぁと思いながら帰った。彼女の手を握り返せたら幸せだろうなぁって。
以後、小野さんとは一緒にアルバイトを続けることになる。
似たような経験のある人には分かると思うが、
好きな娘と会う生活は、生活のペースはすっかり狂う。
ほら、好きな娘ができるといろんなことが気になるだろ?
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