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少女はきょろきょろと人っ子ひとりいない公園を見渡し、入り口から一番近いベンチに腰を下ろした。 座面はすっかり冷えていて、次第に体から熱が奪われていく。 彼女は小さな両手を摩りながら、鞄から取り出したタブレットをほんのり赤くなった膝小僧に乗せた。
辺りは物音が死んでしまったように静かで、自然と、心臓の強い鼓動がよく聞こえるようになる。
約束の時間までもう少し。
少女がタブレットを凝視していると、突然、無骨な機械からは似つかわしくない警戒な音楽が──着信音だ──流れ始めた。 彼女は定刻通りの流れに安心しつつも、爆速に胸裏を緊張で飽和させながら『ビデオ通話』ボタンをタップする。
すると、白い背景の画面上に生まれて十八年間(正確には十七年になるのかな)ずっと見てきた顔の女性──わたしのお母さん──が現れた。
相手側には逆の状態で自分のことが映し出されているのだろう。 途端、少女の心臓が言葉では表せられない感情で締め付けられる。
「……おかあ、さん」
喘ぐような掠れ声が口を衝いた。 頰が熱くなって、瞬く間に双眸が涙で溢れそうになった。
ようやく会えた。
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