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ミサキは合格の報せをネットで確認した際、寝る間も惜しんで勉学に励んだ時間の全てが報われた気がして、涙を流したものだった。 が、今の母の労いがミサキに与えた影響は、方向は同じこそすれ感情の揺さぶりはまるで異なっていた。
ミサキの頬を止めどなく流れるものがあった。
「お、お母さん……っ。 わたし、わたしね」
──叶えられなかった願いが、叶ったんだよ。
安堵と、後悔の昇華と、哀惜に身を包まれる。
堰を切って溢れた温かな雫が、画面の母を濡らしていく。
もう、自分の意思で止められないほどの滂沱であった。
「ずっと、頑張ってきたの。 苦しくても、死にたくなっても、がむしゃらに頑張った。 これがわたしなりの親孝行で、だから本当はお父さんだけじゃなくて、お母さんにも、直接伝えたかったッ……」
ミサキの、糸のようにか細い声を、母は真剣に聴き入った。
嗚咽して、洟をすすって、人目も憚らずに泣き続けるミサキ。
彼女はたった数分で、一年ぶんの全てを吐き出しているかのようであった。
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