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『ミサキの気持ち、お母さんにはちゃんと伝わってるよ』母は宥めるようにいって、『この一年、私もミサキが笑顔で合格を報せてくれるのを楽しみにしてた。 そうして将来はどんな光があなたに当たるのか、気になっていたんだけどね……。 ごめんね、ミサキ』
語る母の言葉は揺らがないけれど、恐らくこのメッセージを託したとき、無機質な空間で怯え苦しんでいたのかもしれない。 却ってそれがミサキに心痛を与えた。
ミサキは「お母さんが謝ることじゃない」とかぶりを振る。 彼女自身、謝りたいと思っていた。
ごめんなさい。 お母さん。 一人のままで──。
「……お母さん、会いたいよ」
『私も、心の底からミサキに会いたいわ。 あなたの寂しがり屋な部分を知っているから、尚更に』
母に会いたい。
強がりからあぶれた一つの本音。
いじわるな願望だと、ミサキは思っていた。
お母さんに会えないことは十分言い聞かせてきたのに。 お母さんを困らせるだけだと分かっていたのに。
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