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「なら、脚の力を緩めてくれ。このままじゃ君を、もっと悦くしてあげられないよ」
「だぁ・・・め。これ以上動、たら、翔、すぐイっちゃ・・・でしょ?」
動かなくても、果ててしまいそうなんだけれど。
「刺青のあいつはさ、ずるかったんだよ。何でも望みを聞いてくれるって言ったくせに、イくだけイって、すぐ、逃げようとしやがって」
興奮しているからだろうか、いやによく喋るな。
「あいつも、僕のストーカーだったんだ」
「へえ。君は、君に囚われて過ちを犯してしまった人間を、随分と誑かしてきたんだね」
今の俺のように。そう、心の中だけで呟いた。
「そいつは夢ごごちだっただろうね。意中の君に、思う存分欲望をぶちまけられたのだから。きっと天国でも見たんじゃないかな」
ミツキはうっとりと顔を歪める。
「ああ。見せてやったさ。でも僕は、見てもらうだけじゃダメなんだ。それじゃあ足りない。だから僕のために、天国に行ってくれって言ったんだ」
「・・・は?」
言葉の意味を理解しようとした瞬間、ぶら下げていたネクタイをミツキが引っ張った。そのまま全力で首を絞められる。息ができず、むせそうになりながら緩めようと必死になった。
「なに、す・・・」
「イかせちゃうとさ、相手の頭が冷静になっちゃって、その後が手こずるんだ。だからその前に、ね」
華奢な体に似合ないほどの力。気道が圧迫され、ギリギリと軋む音が聞こえてくる。
「翔は、知ってる?人間て、死ぬ直前が一番、精力が高まるんだ。子孫を残さなくちゃって、ありったけを全てをぶち込もうとする、その燃え尽きる瞬間の足掻きが好きでさ」
倉木の首を絞め上げながら、ミツキが腰を揺らす。
「ほら、ここにいっぱい溜まってんだろ?全部中に出してくれよ。早く」
息ができない。何も考えられない。限界なんてとっくに超えていた。
「僕を最高に、アガらせてくれ」
たまらず、ミツキの腕をつかもうと手を伸ばした。その時、後ろからワイシャツをものすごい勢いで引っ張られる。袖に通された両腕が、そのまま後ろに引き摺られた。後ろ手で絡まり、身動きが取れなくなる。
誰・・・だ・・・?
意識がだんだんとぼやけてきた。頑張って顔を動かす。
後ろにいたのは、かつてミツキを盗撮していた時に、倉木を注意したあの男だった。
気弱そうな、あの、メガネをかけた・・・
男の顔は涙で濡れてぐしゃぐしゃだった。苦しげに呻いている。なのに、その瞳はどこか恍惚と熱を帯びていた。
何だ、こいつは・・・
「その人が、僕の本当の恋人だよ」
ミツキの内側が大きくうねる。こんな時なのに、快感がぞくぞくと這い上がり、もがく力を緩めそうになる。
「僕が寝取られているところを見ると、興奮するんだってさ。可愛いでしょ。僕は彼が大好きだから、こうやって他の男に抱かれる姿を見せてあげてるんだ」
・・・そういえば、さっきテーブルに置かれていた3つ目のカクテル。あれはもしかして、こいつのものだったのか。
意識が、急速に薄れていく。もうダメだ、強くそう思った時、ミツキが艶のある声で囁いた。
「ほうら、翔。急がないと死んじゃうよ?いいの、このまま死んじゃって。やり残したことがあるでしょ」
言いながら、下半身をぎゅうぎゅうと締め付ける。
朦朧とする中で、倉木は最後の力を振り絞る。
そうだ・・・だって、俺はまだ・・・
意識が途切れる間際、ミツキに突き立てた自身の先端から大量の白濁が放出される。何度も脈を打ちながら、残りの一滴までを捧げるように、奥の奥へと注ぎ込んだ。
ミツキが甘い声で鳴きながら潮を吹いた。これまでの人生で見た中で、最も美しい姿態だった。
・・・こいつは、悪魔だ
そのまま、倉木の意識は溶けて消えた。
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