無彩

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 ドドドドドドドド。ガシュ、ガリガリ。ドドドドドドド。ゴシゴシ、キュ……。  私は息をするように筆を走らせる。色鮮やかな悲鳴が、キャンバス中を叫び回った。  ぐちゃぐちゃな感情を整えるように、呼吸よりも速く手が動いた。時には筆を使わないまま指でベタベタ塗りたくることもあった。そうすれば、私は楽になれた。まるで私はかんしゃくを起こすように、画面を殴るように絵を描いた。 「瑠華(るか)ちゃんは天才だよねぇ。色鮮やかな画面、斬新な構図。無才の私たちには考えつかないような絵を描くし」 「そうそう。天才はやっぱ違うんだよ。さあ、私たちは諦めてお茶でもしに行こうか」 「だねー」  背景と同化した美術部員たちがワイワイと美術室を出て行く。ソレを横目で見てすぐにキャンバスに向かい直す。なぜだか妙に筆が進む。いつだって、私の居場所は絵の中にあった。小さな頃から、落ち着かない感情を絵に描いていれば、どんどん絵を描かされた。特に両親が、いい気になって私に画材を買い与えた。周りは私を天才だもてはやし、そのたびに両親は得意げな顔をした。
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