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たぶん、一目惚れだった。 高校1年の春、俺は念願の日笠(ひかさ)高校に入学した。 この辺では割と有名な、男子バレー部のある高校。 バレーを始めたのは小学生の頃。仲の良かった友達に誘われて行ったバレーボールクラブがはじまりだった。バレーボールは全くの未経験だったけれど、その頃から身長の高かった俺はクラブのみんなに歓迎された。 コーチと呼ばれる人に基本的なことを教わりながら、見様見真似(みようみまね)でボールを触った。思った場所に飛ばせないボールにもどかしさや悔しさを感じたけれど、出来た時にはそれ以上にぐっと込み上げてくるような嬉しさや面白さがあって。 まだ二桁に届かない年数の人生の中で、こんなに夢中になれたものは初めてだった。 ひとつ、またひとつ出来ることが増えていく度に俺はバレーにハマっていって、中学を卒業する頃には日常の一部のようになっていた。 とは言っても、プロの選手になるなんてことは到底無理なことは分かっていたし、なろうとも思ってはいなかった。ただ、中学も高校も、できればその先も何かしらの形でバレーが出来たらいいなんて、漠然と思っていただけ。 暖かい日差しと、まだ少し冷たい風。かっちりと形作る制服を着て、坂を上る。 見えてくる校舎と、その奥に体育館。 バレー頑張って、勉強はそこそこやって、友達とバカやったり、まあ彼女もできたりしたら、なんて。 これから始まる3年間に、心は少し浮ついていた。
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