堕胎福音

『人は皆、業(カルマ)を宿しこの世に産まれます。本来、この業は正しく向き合うことで輪廻を全うでき、高次元へ魂を昇華させる助けとなります。
　しかしながら現代では人口急増や過剰な精神活動により、その均衡が崩れてしまいました。これに対し大いなる意思は、近いうちに個体レベルのアポトーシスを本格化させます。
　堕胎福音はこれを免れる唯一の救済です。それは人が持つエネルギー入出の要であるチャクラを利用し他者と精神集合したうえで業を共有すること。即ち精神オンライン化と言えるでしょう。
　そのためには一度、自信の宿す業を堕胎させることが必要不可欠です。望まれる方は、まず聖胎教団のオンラインセッションへご参加下さい』
　このウェブページを一ヶ月前に由利から見せられた。誰が見ても普通じゃない内容。俺は聞き流しやめるよう促し続けた。でも聞き入れる様子は無く没入具合が増すばかり……。
　そこでスピリチュアル関係に詳しい高校来の友人、正人に相談することを決め、さっそく駅前のレストランに呼び出した。
　昼下がり、親子連れがちらほらする店内。インテリ感漂うメガネが似合う正人はニヒルな笑みを浮かべた。
「ほぉ……龍也(たつや)が嫌いそうな感じ」