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三
「やっぱり、晴れた日といえば公園だよね!」
そう言ってたどり着いたのは、海沿いの公園だった。少しだけ吹いている海風が、彼の髪の毛とシャツの襟を揺らしている。
「意外と人がいるね。家族連れとか」
「ね。まぁこんなに天気がよくてあったかいと、外に出たくなっちゃうよねぇ。
あ、広瀬さん、あの船の中入ったことある?」
彼が指さした先には、大きな船が停泊していた。
「ない! あの中入れるんだ、知らなかった」
そんなわたしの言葉に、彼はうれしそうに笑った。
「それなら行ってみようよ!
船から見える景色もすごくいいし、中もおしゃれだから『映え』だと思うよ」
「ふは、なんか深沢くんが映えとか言うとちょっと面白い……」
「なにそれ、どういうこと!?」
そんな風に会話しながら、船のチケット売り場にたどり着く。
聞かれるよりも早く「高校生、2枚!」とたいへん元気よく言い放った彼に、係員さんは少しきょとんとしながらも、「いってらっしゃい」とほほえんで入場券を2枚渡してくれた。
「ずっと言ってみたかったんだよね、『2人です』って。
夢、ひとつ叶った」
そう言って、また目をぎゅっと細める深沢くん。学校でほとんど彼と話さないぶん、こんな風に笑う人だと思ってなくて、しばらくぼうっとその顔を見つめてしまっていた。
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