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「あー、すっごいキレイだった!  ねぇ、もうちょっとだけ大丈夫? 最後に汽車道を歩いて帰ろうと思うんだけど」  時計を見ると、時間は六時前だった。 「あと、もう少しだけなら……」 「おっけ、最後まで夜景を楽しんでこ!」  そう言って深沢(ふかさわ)くんは歩き出す。その間にも色々話しかけてくれたけれど、なんだかうまく受け答えをすることができないでいた。  彼の向こう側に見える大観覧車のネオンが、なんだかすこし、にじんで見えた。 「……ねぇ、深沢(ふかさわ)くん」  ふと、わたしは、彼の名前を呼んだ。  言わなきゃいいのに。そう思っても、もう、伝えずにはいられなかった。  そんなわたしの思いは露知らず、深沢(ふかさわ)くんは優しく「なぁに?」なんて返事をしてくれる。  わたしは、覚悟を決めた。 「あのね……。  ……ごめんね、深沢(ふかさわ)くん……」  わたし、深沢(ふかさわ)くんをだましている。そんな気がした。  深沢(ふかさわ)くんの気持ちに、まだわたし、100%で答えられないのに。  ついうつむいたわたしに、少し間があいて、深沢(ふかさわ)くんの声が聞こえた。 「知ってるよ。わかってるから、大丈夫。  広瀬(ひろせ)さんが今のところ、おれのこと、なんとも思ってないってこと」 「……深沢(ふかさわ)くん……?」  そんな深沢(ふかさわ)くんの言葉は、びっくりしてしまうくらい、あっけらかんとしたものだった。 「あの短歌を読めばわかるよ。誰か先輩のこと、好きだったんだなぁって。  だからそもそも、そんなに期待なんてしてない。  ……ま、かといって諦めたくもなかったから、告ってみた。  まさかオーケーしてくれるなんて思ってなかったから、逆にチャンスもらったなって、おれとしてはすごく嬉しかったんだよ?  だから、気にしないで。できたらもうすこしだけ、チャンスくれると、うれしいかなって」  そう言って、さっきと同じようにぎゅっと目を細める深沢(ふかさわ)くん。  そんな彼の気持ちが、じんと胸に響いてきて、わたしは思わず彼にわからないように涙を拭った。  つい、ぽろりと、言葉がこぼれだした。 「……直接、会いたいな。深沢(ふかさわ)くんに」
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