第一話

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第一話

* 「あの、それ、なんですか……?」 「り、リハビリ……?」  大和田の部屋で二人きりになったはいいが、コーヒー談義に花を咲かせただけだった。末次はタバコは付き合いぐらいしか吸わないらしいが、大和田は執筆中はタバコとコーヒーばかりの生活である。タバコの匂いとか嫌いじゃない?と聞いても「慣れてるんで」というのが優しいななどと思ったりした。  本当の君を見てみたいと言ったところで、すぐに色々話すということでもないし、何かを話せばすぐに解り合えるものでもないだろう。ちょっとずつ距離が埋まればいいなあと思ってはみたが、末次の方も遠慮しているのか距離がある。……ということで、その冷たい指先を握ってみたところで冒頭に戻る。  そして、末次の反応に「いや、今時中高生でもこんなことではないよな!?」と大和田が一人で反省しているところである。とはいえ、家にあげたところで、自分にこれ以上の何かをできるとも思えない。あまりの幼稚さに羞恥から耳が赤くなるが、「嫌だった?」と聞いてみると、末次はいいえ、とふるふる首を振った。無表情ながらも可愛らしい仕草に「なんか癖になるな……」と心の奥が暖かくなる。 「ごめんねぇ、こんなんで」 「いえ。嬉しいです。俺からは嫌なことをしてしまっても困るので」  そう言う末次は完全に大和田の許可待ちなのだろう。そして、それでもいいと本気で思っているようだった。自分の意志と体の反応がまだチグハグとはいえ、前向きなことを伝えなくては、と大和田も、あのね、とその手を握る。 「末次くんは、最初から部屋にも入れられたし……その」 「!あの時はすみませんでした」 「いや、そういう意味じゃなく……っ」  緊張しないってことを伝えたかったんだけど……と大和田はどういえばいいかを悩む。しかし、あの時とはまた「関係」が違うのも事実だ。 (でも、確かにこう意識しちゃうと、前より緊張するな……)  どきどきしつつも、慣れなくてはという義務感もあってキュッと指先を握る。するっと指を絡められたのには驚いて「さ、さりげない……」と良くわからないことに感動してしまう。本当に幾つなんだよ、僕は、と自分の恋愛ブランクに情けなくなるばかりだ。
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