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(な、んっ、っなんだ、あれはーーー!?)
今まで気づかなかった自分が悪いのか?それとも、急に見える世界が変わるほど自分が浮かれているのか?よく分からないが、昨日までとは別人のように見える。
(か、かわ、かわ、可愛すぎない!?僕には純粋すぎて手が出せないよ!?いや、出せるような度胸ないけどね!?)
誰が見ているわけでもないのに、ああああ、と顔を覆ってどうしようどうしようと動揺する。
(え、本当に、ほんっとうにあんまり人と付き合ったことないとか?忙しいだろうしなあ……でも、でも、あんな顔するの!?)
もちろん表情の変化は微々たるものだ。けれど、その裏に隠されているような気持ちがにじみ出ていて……芝居のようなわかりやすさは全くないのだけれど、その小さな変化が癖になる。
彼のいろんなことを知りたくなって、ふと思い浮かんだのは彼の親友である高田友喜の顔だ。しかし大和田はそのそこそこ親しい相手の顔を必死で頭から掻き消した。
(いっ、いやだーーッ!友喜くんに訊くなんてめちゃくちゃ笑われそうだし!でもでも、末次くんのことなんて友喜くんぐらいしかわかんなっ……)
そこまで思って、ふと彼に望まれたことを思い出す。
「なぎさ、くん……」
玄関先で一人で呟いたその名前に、かあああっと頰から耳まで熱くなった。
「いや、なんなんだこれは!!」
玄関先で一人で身悶え転がりながら、恥ずかしくて死にそう……と誰にでもなく呟いて、ただただ熱くなった顔を覆うことしかできなかった。
*
本編は2021年5月にKindle化しました。
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