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コガネをカリヤスのところに置いて、自分だけクロガネ宅に戻ることにした。帰りの小舟を操りながらクロガネが不思議そうに尋ねた。
「あいつは、お前の身内じゃないのか?」
「ああ、身内ではない。旅の途中でコガネが勝手に付いてきたんだ。親兄弟を亡くし家を焼かれて行き場を失ったらしい。自分の居場所と決めたところが見つかるまで、という条件付きで一緒に旅をしている」
「……内陸部は、まだ荒れているのか」
クロガネは、陸に振り返って溜息を付いた。
「少しづつ元の姿を取り戻しつつある集落もあった。ただ、行き場を失った者らが生きる糧を得るために野盗化して、あちこちに根城を構えている。もともと暴力で奪うことに躊躇がない兵隊上がりは始末が悪い。安直に人から奪うのではなく、自ら創り上げる方に回ればよいのに、なかなか皆が皆そうはならないんだな」
「また、国としてまとまるのだろうか」
「うーん。どうだろう。強権な為政者には、もううんざりしているという気風が高まっているから、仮にまとめようと動くものが出ても以前のような君主制には戻れないだろうな」
「なるほど……そうか」
ゆっくりと舳先を陸へ回す。
「青の民の成り立ちについては、シロも承知していると思う。今、我々は緑の国に一ヶ所、黄の国に二ヶ所、島国の朱の国に一ヶ所、拠点としての港を設けている状態だ。黄の国にあるもう一つの港は商港として公になっていて、ここよりはるかに大きな街だ。青の民だけではなく内陸の民が主に居を構えている」
「へ? それ知らない。後で地図見せるから、どこらへんか教えてほしい」
「ああ、いいぞ。我々には内陸の情報をもっと教えてくれ」
河口へと漕ぎ戻る流れに乗った。
「シロはこれからどうするんだ? カリヤスに品物は届けたんだろ?」
「もう一つの目的がある。こっちも面倒なことになりそうなんだが、……夢見草を探してるんだ」
「夢見草? よく農村に植わっていて春を告げるアレか?」
「そうそう、それ。若木が欲しいのに、全然見つからないんだよ」
「うーん。すまん。そっち方面はわからんなぁ……」
「黄の国はあと海側を残すだけで大方回りきったと思うから、次は緑の国で探してみるさ」
「緑の国へは黄の商港から海路で行く方が安全だぞ。商船を紹介してやれる」
「ありがたい。是非甘えさせてもらうよ」
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