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翌日、カリヤスの工房へ行くと、コガネはすっかりカリヤスに懐いていた。おじいちゃんと孫といった雰囲気だ。コガネは、こちらを見つけて、シロだ! と叫び、
「オレ、居場所見つけた! カリヤス親方んとこで、一人前の細工職人になる!」
抱きしめたくなっちゃうくらいのキラッキラの笑顔で飛びついてきた。
「そっか。コガネは器用だからな。きっといい職人になるぞ」
別れは寂しくないと言ったら嘘になるが、もともと独りだったのが、またもとに戻るだけだ。それより、コガネが心から「ここがいい」と思った居場所が見つかって本当に良かった。
「時計修理の進捗を見に、時々戻ってくるかもしれないから、その時には修行の成果をみたいもんだな」
「分かった! シロがびっくりするようなのができるように、オレ頑張るから!」
クロガネと最初に出会った川原まで送ってもらう。いずれまた、と挨拶をしてクロガネの小舟を見送った後、昨夜書き込みしまくった地図を広げる。
情報を集めるなら人が多いところに行くのがよさそうだ。
「んー、まずは商港を目指すかな……」
背嚢に地図をしまってから、ひとつ伸びをして西に向かって歩き出した。
< 終わり >
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