野盗団

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「この度は重ね重ね無礼の限り。まーこーとーに申し訳ございません」  あれからなんやかやあってだな、結局、賊の根城に招待されることになってしまった。いつの間にやら準備されていた宴席の前に、賊一党の土下座を受けることになったわけだ。  長らく旅をしてて、こんな愉快な野盗の集団に会ったのは初めてだよ、まったく。宴席をよく見ると、ご丁寧にクロスが敷いてあったり、皿の端に野花があしらわれていたりして……先ほど感じた得体の知れなさがよみがえる。窓辺にかかる花模様の天幕は……一体どこから持ってきたんだ? ここ、野郎ばっかりだよな。 「もういいから……別に怒ってもいないし、気ぃ悪くしてるわけでもないから。顔上げてもらえないかな」   極まりが悪くてしょうがない。 「は! シロ殿」    うわー……気持ち悪い。 「シロでいいよ」 「お詫びとして、心ばかりの宴席を用意させていただきました」 「え? でも、これって……盗品だろ?」 「いや、買ってきたものもあります!」 「頂戴した金で!」 「そりゃ、アウトだろ!」  頭痛くなってきた……。 「酒はこだわって作っている。野菜類は、裏の畑で育てているものもある。ここにいる者たちは、住む場所を追われてさまよっていた者、旅団からおいて行かれた者、俺のように国が滅びて奉公口をなくした元兵士など様々だ。申し遅れたが、俺の名はオウタンだ」  大男、改めオウタンに、「ささ、一献(いっこん)」と酒を勧められた。果実を発酵させて作った酒のようだ。なじみのある匂いがする。  国じゃ、冬場は保存食と発酵食品ばっかりだったせいか、酒に関して自分は「ザル」とか「枠」とかいわれる部類に入るらしい。まぁ、果実酒は保存がきく果汁くらいの分類だったから、しょうがない。  コガネは離れたところで他のメンツと楽しそうに話している。ここの居心地が悪かったわけではないらしい。時々野盗の真似事をするのが嫌だっただけで……。
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