野盗団

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「全盛期のアワの国は、なかなか良い国だったんだろ?」 「ああ。美しい国だった。王の強欲っぷりは大概だったけどな。美意識は高く、街並みは美しく……。王は美しいものを好む性質で、美術商や貴金属の細工職人なんかがたくさん出入りしておったものだ」  細工職人……? 「どんな職人が出入りしてたかなんて、覚えてるか?」 「……細かいことは忘れたが、えと……なんだ、大陸一の細工職人を頼んでいたぞ。確か、名前は……」 「……カリヤス」 「そうだ! それ! って、なにゆえにシロがご存知か?」 「ずっと探してんだよ、その人」  そこで、カリヤスの住んでいた街は壊滅していたこと、そこから消息が全くつかめなくなっていることを話した。オウタンが何か手掛かりを持ってるのでは、と期待して。  オウタンはしばらく首をひねっていたが、考え考え答えた。 「さすがに、消息は知らぬな。王が遠征に出てから美術品のたぐいの取引は激減していたし……。まぁ、心当たりと言えば青の民に伝手をもっているかもしれん、ということぐらいだ」 「青の民? どうして?」 「細工物に使う材料を(あけ)の国から取り寄せていると聞いたからだ」  なるほど。(あけ)の国は島国。材料を取り寄せるには、海上に住み大陸と島を行き来できる青の民の協力が必要だ。それは、思いつかなかったなぁ。下手をすると、青の民を頼って、(あけ)の国に逃れている可能性もある。道理で大陸での消息がつかめなかったわけだ。 「ついでと言っては何だが、夢見草を見たことはあるか?」 「ほう……。そういえば最近見かけないな。昔は、どの町村も神木として世話していたものだが」  こっちはわからず、か。
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