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盗品じゃないっぽい野菜だけつまむ。
それにしても準備の良いことだ。まさか、連日こんなごちそうを食べられるほど野盗業が儲かっているわけではあるまいに……。
慎重に箸を進めているこちらを尻目に、オウタンは機嫌よく手酌で酒をあおっている。
「シロの兄ぃ! コガネを村まで連れてってやったとか。お優しいこって……」
さっき、背嚢に嚙り付かれて右手に包帯を巻いた男……チョウジとか言ったか……が、数人の仲間と一緒に酒の入ったピッチャーを持って酌をしにやってきた。もう、細かいこと一々訂正するのも馬鹿らしくなってきた。
もういいよ「兄ぃ」でも何でも。
「俺らの成りじゃ、怪しまれるもんでなかなか行きづらかったンすよ」
「イナの村辺りは、ちょっと強引な奴らのシマですし、変な詮索をされたら今の生活が危ないもんで」
まぁ、気持ちはわかる。盃を干して、チョウジの酌を受けた。
「それにしても、豪勢なことだな。これだけの宴の準備には骨も折れたろうに」
「いやぁ、それがですね、数日前に偵察部隊が山の端で兄ぃとコガネの姿を見つけて親分に知らせたんっすよ」
「したら、親分が『リベンジだ!』とか言って、強襲かける宣言をして……」
「本来これは兄ぃを吊るし上げて、それを肴に呑む予定だったわけで……」
目を瞬く。
マジかよ。うわ……あっぶねぇー……。
つーかな、普通そういうことをペラペラしゃべるか? 酒入ってるからか?
「親分、筋肉大好きだから」
「下手すっと、真っ裸に剥かれてたかもしれないっすよ」
サーっと音を立てて血の気が引いた。
勝負に勝ててよかった。本当に。
「あー、そろそろ親分が仕上がってきますよ」
「はい?」
「アワの国の軍隊の宴会芸が、『筋肉自慢』だったらしくてですね」
「親分、酔っぱらうと脱いで絡んでくるんすよね」
「へぇ……なかなかの……」
地獄絵図だな、そりゃ。
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