野盗団

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 後の言葉は飲み込んだ。見れば、オウタン、上機嫌でいそいそと脱いでいる。のみならず、近くの仲間の服を引っ張って脱がそうとしている。    最悪じゃないか……。    調子にのって脱ぎだしたのは、兵隊上がりの者か。しばらくすると、数人の締め込み一丁の野郎どもが座の中央で自慢の筋肉をパンプアップさせてクネクネするという、戦慄すべき光景になった。  コガネ、よくこんなのに素面で耐えられるな。  そのうち、オウタンがこちらを見て近寄ってきた。他の者は、示し合わせたようにサッと席を外す。    ……なんだよ、怖いじゃないか。 「シ~ロどのぉ~」 「!」   オウタンが指を絡めながらクネクネしている。嫌な予感しかしない。 「お強い上に、イケメンなんてぇずるいわぁ~」 「!!」  やっぱ、アレは気のせいなんかじゃなかった!  じわじわと後ずさる。周りを見回すと、皆あさっての方向を見て、目を合わせようとしない。  ひでぇな、おい。しなをつくって四つ這いで迫ってくる禿頭(とくとう)の筋肉質な大男なんて、怖いだけじゃないか! 「シロどののぉ~筋肉を拝見したいわぁ~! 是非っ!」 「いやっ、ちょっとっ、まっ……」  怖い怖い怖い……。後ずさりしながら逃げ場を探す。 「ね? 脱いでっ? 見せてっ」  酒臭い息を吐きながら囁くオウタン。  なんでそうなる? 結局一緒じゃないか!  背中に柱が当たった。  ヤバい。追い詰められた。 「ねぇん、シロどのぉ~」 「ひぃい……」    ええい! ままよっ!  首を伸ばしてきたオウタンの顎に、渾身の掌底打ちをぶちかました。ふいに脳天を揺らされて白目をむいたオウタンは、ぐらりと揺れると、そのまま降ってきた。 「兄ぃ! 大丈夫ですかい?」  チョウジが心配顔をのぞかせた。この薄情者めが。 「……とりあえず、生きてるー」  伸びたオウタンの下敷きになって、力なく答える。  ヤバかった。絶体絶命かと思った。寿命が十年くらいは縮まった。もう、アワの国関係者はこりごりだ。それに、もう絶っ対顔出ししない。危ない。最悪、死ぬ。……死ぬわ、マジで。 
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