青の民

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 舟を岸につけると、切羽詰まった様子で一人が開口一番にこう言った。 「どうした?」 「人探しをしている。旅の者だ。シロという。こちらはコガネ」 「……我名はクロガネ。探し人は何者だ?」 「腕の良い細工職人で、名をカリヤスという」  クロガネと名乗った男は、腕を組んでこちらを吟味するようにじっくり眺めた。 「何の用があるのだ」 「修理してもらいたいものがある。多分、カリヤスでないと直せないものだ」 「……俺の一存ではいかんともしがたいな。とりあえず、舟に乗るといい。集落に案内しよう」  なんか、上手くいったようだ。小舟に乗り込み、流木から手ぬぐいを外してコガネとそれぞれ仕舞い込んでいると、クロガネが笑い出した。    何だ? 「偶然にしちゃ、できすぎだな」 「なんのこと?」  コガネが顔を上げて訊いた。 「その旗が、遠目に黄色と黒の旗印に見えたんだ。青の民でもないのに何故?と思って不思議だったんだが……」 「旗の色になんか意味があったのか?」  重ねて訊く。 「ああ、我ら青の民は声の届かない海上では、色のついた旗を使って会話をする。黄色と黒の旗は『助けを求む』だ」  あ、それで、単刀直入に「どうした?」だったのか。そう思ったら、緊張が解けて急に笑いがこみ上げてきた。小舟が集落に着くまでの間、漕ぎ手も含めて四人で笑いどおしだった。
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