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「どうすんの? みんな逃げちゃったよ」
子どもの肩をポンと叩くと、悲鳴を上げてひっくり返った。あどけない顔は、まだ六、七歳といったところか。目に涙をためて震えている。
「何もしないなら、こっちも見逃してやる。逃げるんだったらどうぞ」
子どもは歯の根も合わず、完全に腰が抜けた状態のようだ。このまま置いていくのも気が引けて、落ち着くまで付き合ってやることにした。とりあえず、背嚢から革袋を出して水を飲ませてやると、ようやく人心地ついたようだ。
「お前、名前は?」
「……コガネ」
「さっき逃げた奴らは仲間じゃないのか?」
「違う。オレは拾われただけだ。あんたも、誰だよ。アヤシイ術使いやがって」
元気になって本調子が出てきた。なかなか生意気なお子様のようだ。
「シロって呼んでくれ。このご時世、独りで出歩いてるんだ。身を守る術の一つや二つ身に付けていたところで咎められる筋合いはないだろ」
コガネはプスンとむくれてそっぽを向いた。拾われた……って、戦災孤児かなんかか。大方、賊の下っ端として囲われていたのだろう。
「……オレ、イナの村にいたんだ。……焼け出されて他の人とはぐれたところで、アイツらに会って……。アイツらも住んでたとこがダメになって、盗賊まがいのことしてたから。……ちょっと世話になってただけだい」
やっぱりな。逃げた賊も、案外心根はやさしいやつらなのかもしれない。
「イナの村か……。お前、結構頑張って逃れてきたんだな」
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