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二人でイナの村に引き返す行程は順調で、予定通り数日後には見覚えのある村の入り口まで戻ってきた。
もっと喜ぶかと思ったら、コガネは慎重に村の様子を見まわしている。復興したら、憶えのある家並と変わってしまったのか。
前回世話になった家にまた訪れてみた。見覚えのあるおかみさんが、びっくりした顔で出迎えた。
「あらまあ、どうしたんだい。忘れ物かい?」
そして、コガネの姿を見て、また驚きの声を上げた。
「コガネじゃないか! あんた、まぁ、生きてたんかい!」
コガネはどうしたらいいのか分からないというような困った顔をして、微妙に頭を下げた。このおかみさんとは、あまり親しくなかったのだろうか。おかみさんはいったん家に引っ込んで作業用の前掛けを取ってから、再び表に出てきた。
「あんたの母さんの妹がね、ずっと探してたんだよ。一緒に行ってあげるからね」
「……オ、オレの家は……」
コガネの問いに、おかみさんは眉をハの字にして振り返った。ちょっとの間、逡巡してから言い辛そうに答える。
「あんたの母さんと妹さんは、村のはずれの森の崖下で亡くなってるのが見つかったよ」
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