出会い

7/9
前へ
/26ページ
次へ
 盗賊団の焼き討ちにあったのが夜中だったので、村人は散り散りに逃げたと聞いた。コガネが母たちとはぐれたのが村はずれの森の中だったらしいので、多分はぐれた後に闇に紛れて路を誤り、崖下に転落したのだろうと思われた。   前回村に逗留したときは、おかみさんの身内ではない者の話まで根掘り葉掘り聞かなかったから、これは初耳だった。 「あんたの家は焼き討ちされた時のまんまになっているよ。あれから大分たってるんで、どうしようか迷っていたところさ」  コガネの叔母宅に行く間、おかみさんはつらつらと現状を説明した。コガネはそれを、どこか他人事のようにぼんやりとした顔で聞いていた。こっちはすっかり蚊帳の外になってしまったが、行きがかり上ここでさっさと撤収するには気持ちが収まらないので、のこのこ後をついていく。  コガネの叔母の家は、路地のすぐ先だった。おかみさんが訪うと、若い女が出てきた。  コガネを見ると、驚いた様子で息をのみ、あとは「あらあらまぁまぁ」でしばらくまともな言葉にならなかった。知らせを聞いたのか、叔母の夫も仕事場から戻ってきて、コガネの無事を喜んだ。身内に迎えられて嬉しいはずのコガネは、始終複雑な表情で押し黙っていた。  照れているわけでもなさそうだが……。いささか気になったが、自分がかかわることができるのはここまでかと思い、おかみさんとコガネの叔母夫婦に挨拶をして辞去することにした。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加