出会い

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 イナの村を後にして、また一人旅に戻る。  夜、独りで焚火にあたりながら先の廃墟以降の旅程に思いをはせていたら、正面の草藪がガサガサと音を立てた。 「……あれ? コガネ?」  草叢から出てきたのは、コガネだった。別れた時のままの格好をしている。 「村、出てきた」 「なんでまた……」  コガネは答えず、黙って焚火の前に座る。思いつめた表情に、それ以上声を掛けられなかった。  二人して火を見つめて過ごす時間が、どれくらい過ぎただろうか。コガネがぽつりぽつりと話し始めた。 「闇の中ではぐれた時、暗闇の向こうから母ちゃんが『逃げろ』って言ったんだ。『自分には構わず、あんたは逃げなさい。大丈夫だから』って。村に戻ったら、母ちゃんも戻ってるって思ったんだ。でも……。オレ、あの時逃げずに戻ってれば、戻って母ちゃん探してれば、生きてたかもしれない。母ちゃんも、モエギも生きてたかもしれないんだ。それなのに、オレ、独りで逃げて来ちゃったんだ。……おばちゃんがオレを見た反応で、なんかよくないことが起きたんだって思った。ホントは、もしかしたら、母ちゃんは……って、思ってたことがやっぱりホントになって、そしたらどうしたらいいのか分からなくなってきて……」  最後の方は涙声になっていた。言葉に詰まって、またしばらく黙り込む。
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