あなたを愛してる

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「おおぉ…凄い進展してるね!?」 「この間聞いた時から、そんな経ってないよ!?」 「あっ、はい…ソウデスネ…」  しーちゃんと奈々ちゃんが、物凄く驚いている。展開の速さについていけないと奈々ちゃんが唸っていた。 「そりゃそうと、湯川だけど今日来てたよ、ウチに。岩崎さんと一緒にさ。めっちゃ驚いたんだけど!?」 「うん、後任も育てなきゃならないからって、暫く一緒に来るみたいよ」 「ひえぇ…元カレと今カレ…こわ…」 「ちょっと、うわぁってなるよね…」 「私も聞いた時に、えぇ…ってなったけど仕事だからねぇ…仕方ないよね」 「いやそうだけど…そうなんだけどさぁ、えぇぇ…」  当然といえば当然の反応だと思う。私だって最初聞いた時には、もう関わらないって言ってくれた後だっただけに、湯川さんもだけど貴将くんも、家で割り切れないという雰囲気だった。せっかく何もかも終わってスタートをする、という時にこの様な事態になったのだから、もやもや感は拭えない。  ランチトレーを片付けてエレベーターホールに向かっていると、そこでエレベーター待ちをしていたのが貴将くん達。他の同僚さんと勿論、湯川さんも居る訳で。 「こりゃ岩崎さんに悪いけど、遠回りして階段で行くか…」 「私だけでいいよ、付き合わせるは悪いから」 「いやいや、それだと絶対聞かれるから、咲良は?って」 「居ない事の理由に気付くってのもあるかもだけどね」 「そう言われると…」 「でしょー、もうここは腹を括って階段上ろうよ」  二人が嫌がらずに階段を勧めてくれたので、階段でフロアを目指す。たった二階分の階段だから良かったと安心したのだけども。 「これ以上だと、ちょっと辛くなるな…お昼食べた後だし」 「今日に限って、いつもより高めのヒールだし」 「歩いて鍛えてると思ったけど…階段は別格だね」  やれやれ、と言いながらフロアに到着する。すると先程の貴将くん達がフロア内に居るではないか。 「ちょっと…私らの労力って!?」 「意味無かったね…」 「そして、私は凄くやりづらい…」  盛大な溜息を吐き、三人それぞれの席へと戻る。梓先輩がもう戻ってきてたので「お疲れ様です」と声を掛けながら横に座る。 「来てたよ、彼氏」 「あ、もうここは回った後ですか?」 「そうよ、ほんの二分前まではそこに居たわよ」 「今日は何かしてるんですか?」 「後任の挨拶みたいよ」 「あぁ…なるほど」 「あまり私達は関わらないけど、営業職として紹介したかった、って岩崎さん言ってたよ」 「そうなんですね…」  それならギリギリ間に合わなかった、という事で無事切り抜けられて良かったのかも知れない。湯川さんとの事情を知らない梓先輩だけで応対してくれて良かったと心底思った。  貴将くん達の方をちらりと見ると、しーちゃんと奈々ちゃんの辺りで挨拶をしている。席が近くだからか、二人一緒に話しを聞いている様だった。湯川さんも頭を下げてるけど、流石にしーちゃんとは面識があるからか、気まずそうにしている。  そうして今度は沙織ちゃんの所へ。今度は貴将くんが気まずそうにしているけども、案外沙織ちゃんがさらっとした応対をしたので、驚いた。実は私以外にもしーちゃんと奈々ちゃんがやり取りを見ていたのだけど、やっぱり二人とも同じように驚いて顔を見合わせてる。  沙織ちゃんは湯川さんの挨拶もスマートに受けていた。なんだか少し変わったなと思う。今までも仕事はソツなくこなしていたのだけど、雰囲気からして何だか今までと違う。上手く言い現せられないのだけど。色々と矛盾している気持ちなんだけど、以前の無邪気な沙織ちゃんには会えないと思うと、少し切なかった。  その後、貴将くんと同僚の方御一行は私達のフロアを離れた。ちらりと貴将くんの方を見ると、少しだけ私の方へ視線を向けてくれて、口の端を上げて笑ってくれていた。  
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