あなたを愛してる

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 カーテンの隙間から朝日が差し込んできて、ちょうど目の辺りが明るく照らされていた。その明るさで目を覚ます。時計を見ると目覚ましを掛けてる時間より少し早く目が覚めた様だった。  隣の貴将くんを起こさないように、そっと布団から抜け出す。ベッドの縁に座って腕を上に伸ばした。ゆっくりと伸びをして、腕を降ろす。カーテンから差し込む光はとても明るかったので外はきっと晴れだろうとカーテンの隙間から覗いてみれば、眩しい程の快晴だった。 「わ、いいお天気」  思わず出た声だったが、呟くような小さな声だったから、どうやら貴将くんを起こさずに済んだようだった。  そっと寝室を出て顔を洗いに洗面に行き、今度は朝食の用意をする為にキッチンに戻る。  休みの日の朝食は和食と決めていたので、炊飯予約していたご飯が炊き上がるのを待つ間にお味噌汁や卵焼き、鮭の小さい切り身を焼いていく。  そうこうしていると、流石に物音で目を覚ました貴将くんが寝室のドアから出て来た。 「おはよう」 「おはよう、ごめんね、うるさかった?」 「いや、嬉しい音だった」 「ふふ、そう?」  ぼんやりしているけども、笑顔で私に近寄ってきてくれて、そのまま、ぎゅ、と抱き締めてくれた。その後に額と頬とキスしてくれて、向き合って、再び「おはよう」と言い合う。 「あぁ…幸せ過ぎる」 「また言ってる」 「え?そう?だって本当の事だし」 「私も」  くすくす笑い合って、朝食を用意したテーブルの椅子に座る。「いただきます」と挨拶をして一口二口と食べ進めていく。 「さぁ、今日は忙しいぞ…いよいよ俺の実家だし。大丈夫か咲良?」 「…うん、たぶん?」 「緊張してるよな…なんか朝から表情硬いし」 「えっ、変な顔してる!?」 「違う違う、変な顔してるんじゃなくて、表情が硬いの」 「あっ…そう、かな…。あまり意識しない様にしてたんだけどな…」  指摘されて初めて解る自分の状態。意識しない様にしているのだけども、緊張をしているのは確か。まさか表情が変わってしまってるとは思わなかったのだけど。 「仕方ないよ、考えない様にしても無意識でってのもあるし」 「…そうかも。今日ね、朝の目の覚め方がいつもと違ったの」 「へぇ?」 「うん…貴将くんの家に引っ越して来る前からだったんだけど、土日ってゆっくり出来るって思ってるから、朝は寝起きとか割とぽやぽやしてるって自覚があるんだけどね…。今日は違ったの。しゃき、って起きれたの」 「確かに…今まで週末の朝って、ぽやーっとしてた。ほっぺつついて起こしても、すぐに目が覚め切らないというか…」 「だから、今日は凄く自分でも重要な日っていうのが身体も解ってるんだと思う。無意識っていうのかな」  貴将くんが小さく笑って私を見詰める。 「咲良の表現って面白いなって前から思ってたけど、やっぱり面白いな」 「え、そう?変?」 「変とかじゃなくて…なんというか、素直だなぁ…って」 「そう…?割と捻くれてるかもよ…?」 「捻くれてるの?それ見せてよ」 「やだ、それはダメ」 「どうして」 「…嫌われたくないから」  ふは、と貴将くんが噴き出して笑う。 「嫌いにならないって」 「そんなの解らないもん…」 「まぁ…いずれ、ね。今日さ、ウチの実家でもそういう、繕わない咲良で居てよ」 「それ大丈夫?変な風に思われない?」 「思われないよ、そのままの方が絶対受け入れられるから」 「そうだといいんだけど…」  よし、と貴将くんが声を発して「ごちそうさま」と手を合わせて言った後に、一緒に片付けしよう、と言ってくれた。 「片付け終わったら準備して出発しよう。昨日母さんからの連絡でも早く来いって、しつこかったから」  咲良に会いたくて仕様がないみたい、と目を細めて笑ってくれる貴将くんに、同じ様に笑顔で返す。  いよいよ、貴将くんの実家へ。
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