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胎動
白夜の白い光に照らされる大聖堂で一つの鼓動が動き出す。小さくも、力強く、確かに。
その鼓動は静かに玉響に、光の中で刻々と——
光の聖堂内に吊り下がる、鎖で巻かれた繭。
糸の代わりに鎖が硬く、鼓動を打ち鳴らす内なる何かを縛る。
ただ、もう眠る時間は終わりだ。
繋ぐ鎖は断ち切られ、鼓動は大理石の床に産まれ落ちた。その間、真紅色の瞳が迫る床を見続ける。
鎖の臍の緒が結晶石の床を打った。
解けた鎖の中から鼓動を続ける者が、白い光に照らされる。
身に着けるもの全てが奈落の底のように黒い、虚な目の再誕者。
白夜の空のように光を反射する白い髪。長い前髪が紅く、だけども意思のない瞳を隠した。
そのお陰で露わになった頬の紋様が僅かに発光していた。仮面のように美しく、氷のように無機質な顔が白い光に映される。
黒と白の人型は未だ眠りから覚めず。
——
彼は来る
那由多の闇を切り裂く為に
那由多の光を見出す為に
小さな種火を継がせる為に
彼は来る
那由多の涙を払う為に
可能性を引き連れて
そして審判を食い止める
数多の光を引き連れて
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