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◇◇◇
見間違いじゃないよね。
いつもみたいにちょっとだけ困った顔をして、唇をかみしめていた。でもちらりとだけ目の端っこが光った。
その瞬間、ふわりと、智司が好きなのは私なんだと気づいた。何故かそう、はっきりわかった。
多分、私たちは最初に会った時からお互いが好きだった。赤い糸を握り合ってて、丁度真ん中だけ何故か白かったんだ。なんで今までわかんなかったんだろう。でも今、その糸が切れかけている。ヤバい。
だから急いで追いかけて捕まえた。必死に。
いつも私が捕まえてるから、捕まえるのは得意。
けれども後ろから捕まえたその背中は固く硬直していた。
「捕まえた。何で逃げるの」
「逃げた、わけじゃ」
「今まで逃げたことなんかなかったくせに」
「何でこんな事をする。早く鈴原の所に行けよ」
「智司は私が好きなんでしょう?」
その瞬間、智司の体はビクリとゆれて、ドクンと暖かい鼓動が響いた。
「お前は鈴原が好きなんだろう?」
「違う」
私の気持ち?
500円のチョコにつめた気持ち。本当は智司が好きだった。手作りの高い材料で作ったチョコよりたくさん入っていた私の気持ち。
好きだ。
智司は公園の前の楓の木の前で立っていた。そうして私は思い出した。何故忘れていたんだろう。ここが私が智司と初めてあった場所だ。だからここからやり直さないといけないんだ。
「智司。私は智司が好き。ずっと好きだった。なんで気が付かなかったんだろう。ずっと一緒にいたのに」
「一緒?」
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