Episode,1

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数分後にはバスは到着した。車内の照明がパッと明るくなると同時に、サングラスをした関係者の男が一人、軽快にステップを上がると、マイク片手に説明を始めた。 【キャンプ地で一週間、生活すると100万円進呈しまーすッ!】 一斉に拍手とともに歓声が上がった。 【選ばれしあなた方には、試練と選択の一週間を過ごして貰います。見知らぬ土地で課せられたルールに従い、キャンプ地で生活をします。】 求人広告そのものだった。確か【持ち込む道具や食料品や嗜好品も自由。但し会場にはレンタルも販売もありません。】と注釈付きだった。 だからこそソロキャンプとして参加できるし、お金も貰えるなら一石二鳥だと直感したんだ。 【さぁ乗車時に配布した封筒を開封してください。】 到着するまで開封したら失格だと通達されていた封筒を、ドキドキしながら開けた。 んん?あちこち線が書いてあり、無数のカラフルな水玉模様が散らばっているだけ。文字や記号もないただの紙。いや印刷っぽくないし、布地かもしれない。 【この絵には深い意味があります。模様が何を表しているのか考えてみてください。詳細が判明すればこの絵に情報を上書きすることも可能です。 このバスを降りたら、参加費として10万ゼニをプレゼント。滞在時間中の資金です。もし10万ゼニを使わなければ、帰宅時に現金に換金致します!】 再び大歓声が沸き上がった。けどゼニ?10万ゼニって何? 【キャンプ地のあらゆるものはゼニが必要です。通貨価値は1ゼニ=1円です。 万が一、10万ゼニを失えば自力で稼ぐしか方法はありません。そして生死は保証致しかねます。】 どういうこと?周囲の人たちも、息を飲んでいた。 【リタイア=死を意味します。くれぐれもよく考えて選択してください。 では前から順番に下車してください。】 何だか怪しい。もう辞退出来なさそうだけど。確かに甘い話には裏がある。 とある求人広告に釣られてしまったんだわたし。 ……わかってたでしょ? 事の重大さに気付かないフリをした自分を嘲笑うように言い聞かせた。
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