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手にした紙を封筒ごとサコッシュに入れて、前に進んでいく。
大抵のひとは大容量のトランクを持っていたが、手押し車に近いキャリーカートを押すわたしの後ろ姿は印象的だっただろう。
それでもリュックサックだけでは収まらなかったので、大型コンテナを持ち運んできたのだった。
マイク片手に話していたサングラスの男から、10万ゼニが入った皮袋を手渡された。
「ご武運を。」
「ありがとうございます。」
背中を向けてステップを降りると、バスのドアが閉まった。
その途端、フッと電気のスイッチを押したかのように、一瞬で明るくなった。
瞬いた目を見開くと、360度が座席のアリーナホールの如く、バスに乗っていた十数人が、ステージの中央に立たされていたのだ。
下を向いても、過去を振り返っても仕方ない。少しでも状況を知りたい情報を得たいと、ぐるりと見渡して見せた。
!!!!
人間じゃない。あらゆる種族の動物が、わたしたちを囲うように見物していたのだ。
あーあ。どうやら選択を誤ってしまったらしい。なぜ無謀なことに首を突っ込んでしまうのだろう。
【選択と試練の一週間に耐えられるか。】
騒いでいたわたしたちは一斉に口を噤む。ひとことも聞き逃すまいと、全身を集中して耳をそばだてた。
厳格な声が静寂を生む。座席にいる観客は皆、わたしたちを凝視していた。
【此処は君たちの住む世界とは異なる場所。様々な動物が縄張りを持ち、豊穣な土地を管理し、均衡を保っておる。
ーーー君たちは喚ばれた者だ。
ぜひ、試練と選択の一週間を経て、富と地位を確立し永住して貰いたい。
だが、規則を厳守出来ぬ者は、即刻立ち去るがいい。この一週間は審査だ。心して挑んで欲しい。】
永住?戸惑うわたしたちをよそに、観客たちの騒がしい話し声が重なり合い、響き渡っていた。
【皆の者、静粛に。】
ピタッと話し声が止んだ。
【我等が選びし幸運者には、守護者が供をする。名を呼ばれた者は前へ出よ。】
最初に名を呼ばれたのはソロキャンパーのマサさんだった。神妙な面持ちで一歩前へ歩み出た。
ザザッ。
目に追えない驚異のスピードで現れた茶色の犬が、マサさんの隣に着地した音だった。
【征くがよい。】
無言で見送られては、意気揚々とはいかないだろう。ただこの厳粛な場所から動けることは羨ましく思えた。
例の4人組の中で、意外にも女性のひとりが呼ばれた。独特のキャンディボイスに聞き覚えがある。あ!ななみちゃんだ。彼女もネット配信者だった。かわいらしい猫が弓を描くように降り立った。
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