Episode,1

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山道を一時間半に一度、15分間休憩を取りつつ、急ぎ足にならないよう気をつけていた。3回目の休憩の11時45分頃。黙々と歩き続けるわたしを見かねて、シヴァが(くちばし)を挟んだ。 「そろそろ昼になる。暫し寛がぬか?」 幸い近くには川がある。 「ねぇ。食後もこの調子で歩いて、宿泊出来るところありそう?」 思案顔のシヴァが慌てて答えてくれた。 「到着時間が遅くなるやもしれぬ。モカは何もない戸外で泊まることに抵抗はないのか?」 「むしろ嬉しい!お腹空いたー。」 バサッ! ポケットからレジャーシートを出して広げた。背負っていたリュックサックを降ろして、断熱効果バツグンの銀色の座布団シートを重ねて座ると、両足を伸ばしてグッと伸びをした。 「ああ疲れたぁ。テントよりもご飯食べよう!シヴァは何を食べるの?」 「菜食主義で木の実を好んで食す、って何だそれは?」 手を洗う代わりに除菌スプレーを吹いただけ。 「これは殺菌防止よ。はい!」 持参した食料の中に、無塩4種のナッツセットの袋があった。開封して注ぐように容れたシェラカップを手渡すと、興味津々で見つめていた。 「ほほう。これは初めて見る木の実だな。」 カリッと軽快な音を立ててモグモグしてる。 か、かっ。かわいいーーーーーー! ふと我に返ったシヴァがジロリとひと睨み。 「モカは食わぬのか?」 「食べるよ。」 持参したお弁当を食べながら、衣食住の確保が出来るか綿密に計画を立てようとしたら、カシューナッツに御満悦のシヴァがあくびをした。 「ふわぁ…眠い。この周囲に危険はないと思うが、あの茂みより奥へは決して行くな。何かあれば吾の名を喚べ。」 キャリーカートの持ち手で眠ってしまった。もしかしたら夜行性かもしれない。
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