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オンライン感染
テレワークと言われたところで、実際家でできる仕事なんぞほとんどなく、ただの休みと化している人間も少なくないのではないだろうか。ただのデータ入力の仕事だって、セキュリティ面の問題で会社の作業で打ち込みができなかったりするし、接客や配送などの仕事はそもそもテレワークなんぞ実質不可能である。
それでも、一定以上の割合の人間をテレワークにしろとお達しがあった以上、多少無理にでも出社人数は減らさなければいけない。結果、私もまた殆ど休みも同然の形で在宅勤務を言い渡された一人なのだった。
――実際家でやれる仕事なんかないのになあ。倉庫の管理業務なのに、家でナニしろって話だし。
一応、九時から十八時の勤務時間は家にいて、パソコンだけは立ち上げてはいるものの。だからといって、やれる作業は何もない。ただひたすらその時間を、ネットサーフィンと動画閲覧で潰しているのみである。ほぼほぼ休みも同然の状態で給料が貰えると思えばありがたいように感じるかもしれないが、そのツケは次の出勤日に回ってくると思うとあまり楽しいことではなかった。できなかった分の仕事を結局出社日に無理やりこなし、できなければ残業する羽目になるのでは全く意味がないような気がしている。
勿論、会社側からすれば“できれば残業もしないで”と言ってくるのは見えているが。それならばそれで、仕事量を減らしてくれとしか言いようがない。仕事ができる時間が半分以下になっているのに、仕事量がそのままとあっては回っていくはずがないのは当然のことではないか。
残業するな、出社するな。言う側からすれば、言うだけタダなのかもしれないが。そういうものは現場の状況を見て、現実的な提案をしてから言って欲しいと今の会社に勤めて早十年のOLは思うわけである。
――あーもうやだやだ。コロちゃんなんか早く滅びてしまえこんちくしょー。
酒も飲んでいないのに、酔っぱらったようにパソコンの前でぐちぐちと文句を漏らしながら、趣味のオカルト系サイトを閲覧して回っていた。
緊急事態宣言下において、県外への移動は自粛すべき行為だろう。特に、趣味で旅行に行った、なんて他の人に知られでもしたら大ヒンシュクを買うのが目に見えている。こっそり土日祝日に遊びに行ったんだろうな、という気配のしている同僚や先輩は何人かいたが、一昨年までと違って誰もお土産なんぞは買ってきていないし、出かけたなんてことは一切口にしなかった。集団心理を恐れる日本人らしいと言えば日本人らしいのかもしれない。あまりほめられた話でもないのだけれど。
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