ハッピー・トゥモロー

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 ***  なんとも馬鹿馬鹿しい話だ。自分のような死神を信用して、命より大切であろう妹を託すだなんて。  ルージュがベッドの上で眠るように息を引き取った翌日。私は、彼の妹であるネイビーの部屋の前にいる。 ――くだらない、友達なんて。人間と友達が、本当の意味で仲良くなれることなどありえないのに。  なんて馬鹿な男だろう。  一番馬鹿なのはルージュではなく――そんな彼の思惑通り、妹の部屋の前を訪れている自分自身なのも確かなことだろうが。 『何処までも走って 何度も巡り逢おう  誰もが同じ 還る場所がある  本当の答えは ずっと傍にあった  光と闇の狭間で  本当の愛 見つけよう』  彼が歌っていた歌が、今でも頭の中で回り続けている。あのライブは、悔しいが紛れもなく成功したのだろう。なんせ死神の心にまで、彼のセカイは生き続けることになったのだから。 ――なんとも卑怯な男です。  私はそっと、ドアの前で右手を持ち上げる。 ――仕方ないから……今回だけ。約束を守ってあげますよ。私は優しい死神ですから。  初めて叩いた人の戸は。  思いのほか、優しい音色を奏でたのだった。
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