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なんとも馬鹿馬鹿しい話だ。自分のような死神を信用して、命より大切であろう妹を託すだなんて。
ルージュがベッドの上で眠るように息を引き取った翌日。私は、彼の妹であるネイビーの部屋の前にいる。
――くだらない、友達なんて。人間と友達が、本当の意味で仲良くなれることなどありえないのに。
なんて馬鹿な男だろう。
一番馬鹿なのはルージュではなく――そんな彼の思惑通り、妹の部屋の前を訪れている自分自身なのも確かなことだろうが。
『何処までも走って 何度も巡り逢おう
誰もが同じ 還る場所がある
本当の答えは ずっと傍にあった
光と闇の狭間で
本当の愛 見つけよう』
彼が歌っていた歌が、今でも頭の中で回り続けている。あのライブは、悔しいが紛れもなく成功したのだろう。なんせ死神の心にまで、彼のセカイは生き続けることになったのだから。
――なんとも卑怯な男です。
私はそっと、ドアの前で右手を持ち上げる。
――仕方ないから……今回だけ。約束を守ってあげますよ。私は優しい死神ですから。
初めて叩いた人の戸は。
思いのほか、優しい音色を奏でたのだった。
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